毒舌王子は偽りのお人形の心を甘く溶かす


そしてあっという間に校舎の外へ出て少し乱れた呼吸を整える。


あれだけの人ごみを避けながら全力で走ったのだ。全身の筋肉が疲労しているのがわかった。


……うーむ。毎朝の習慣であるランニングの距離をもう少し伸ばしてみようか?


そしたらまたこんな事があっても疲れなんて微塵も感じずに済むかもしれない。


いや、こんなこと二度と起きてたまるかと思うけども。


「あれ、もしかしてこの学校の"可愛いお人形さん"?」


うーん……何km増やそうか。5km増やすと時間かかるし、3km程度増やすに留めるか……と悩んでいたところ、聞き慣れたフレーズで声を掛けられる。


髪を茶髪に染めてゴツゴツしたアクセサリーを何個も身に付けていて、いかにも遊んでます風の大学生とその友達二人。


よし、がっつり目が合ってしまったけど、ここはあえて気づかなかったふりをしよう。


「あっれ〜?お人形さんじゃないってこと?めっちゃ可愛いから噂の女の子かと思ったんだけどさ」


校舎内の空き教室にでも隠れようと今来た道を逆戻りしようとしたところ、長い足であっさり追い越され、右から顔を覗き込まれた。


あと一歩踏み出していたら自分の唇と相手の唇が当たっていたであろう距離の近さに、意図せず顔が歪んだ。


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