クールな副社長の秘密~偶然知ったら溺愛されて妻になりました~
 桃華も今日で三度目の挑戦だ。

 一度目は、11時少し前に来たら、敷地の中にすら入れなかった。

 二度目は、早めにと10時前に来たのだが、既に敷地内に大行列。お庭を見ることは出来たが購入することは出来なかった……。

 三度目の今日は、門が開くのが9時だと前回並んだ時に、前に並んでいた人に聞いたので、9時に着くように家を出た。門が開く前に並ぶことは近隣の住人に迷惑がかかるため、固く禁止されている。

 最寄り駅を降り、ウキウキした足取りで住宅街を山手に向かって歩く。緑の多いこの地域は、建ち並ぶ家々が豪邸で、通り過ぎる車も高級車ばかり。普段なら足を踏み入れることさえないセレブの街だ。

 どんな人がパンを作っているのだろう?と想像を膨らませショップを目指す。

 ショップが近づきふんわりと焼き立てのパンの香りが漂ってきた。ちょうど、門が開いたところのようだ。桃華も匂いに誘われるように、他のお客さんと一緒に中に入っていく。

 前に並んでいる人は10人程。今日は間違いなく購入できる。三度目にしてやっと出会えるパンにウキウキした気持ちでオープンを待つ。


 まさかパンを買いに来て、衝撃の事実と桃華の運命が変わる出会いが待っているとは、この時は想像すらしていなかった……。


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