クールな副社長の秘密~偶然知ったら溺愛されて妻になりました~
 本社最上階の32階は、役員フロアの受付と秘書室があり、奥には役員達の個室と応接室、特別な時に使用する会議室を完備している。

 樹と藤堂がエレベーターを降りると、受付のふたりが立ち上がる。

「「おはようございます」」満面の笑みで挨拶をしている。

「おはよう」

 樹も挨拶だけ返すと特に見ることなく通り過ぎる。もちろん笑顔を見せることはない。

 そんな樹の姿を憧れの眼差しで見つめるふたりだが、決して想いが樹に届く事はないだろう。藤堂は、内心苦笑いするしかない。

 藤堂は昔から樹を見てきたが、高校や大学時代も全く彼女がいなかった訳ではない。ただ当時の彼女達とは温度差があり、告白されてなんとなく付き合っている印象だった。

 海外赴任中も帰国後も仕事に忙しい事もあってか、女性と関わる事すらない。

 しかも、ここ最近の樹は藤堂との付き合いも悪く、休日には何をしているのかすら全く謎なのだ。

 女性の影はないのだが……。

 何か秘密がありそうだ……。
< 7 / 173 >

この作品をシェア

pagetop