恋愛の偏差値

すれ違い

蓮の後ろをついて行くと、ここは小さい時よく遊んだ公園。
桜の時期には、公園の周りは桜の花で囲まれその時期には大勢の人賑わう。
公園には小さい山があって、蓮は山に入る道を歩き出した。
懐かしいな・・
山頂に着くと、ベンチが置いてあって自分たちの街が見渡せる場所だった。
蓮は、ベンチに座ると大きく深呼吸した。

「俺、小さい時からこの場所が好きなんだ」
「懐かしいね・・蓮とよくこの公園で遊んだよね」
「上から街を見てるとさ、嫌なことも小さく感じて立ち直れるって言うか・・」
「そっか・・蓮素敵な場所に連れてきてくれてありがとう」

特に会話するわけでもなく、2人で静かな同じ時間を過ごした。

お風呂から上がって、ベットに放り投げてた携帯を見ると結奈からメールが届いてた。

「蓮とはどうだったの?明日、報告楽しみにしてるね!」

結奈に返信しようとした時に、またメールが鳴った。
宛先を見ると蓮からだった。
今日、帰り際に携帯番号交換したけど蓮からはきっと連絡ないと思ってたから・・
慌ててメールを開くと

「今日は、楽しかった。また明日学校で・・」

蓮らしい。思わずメールを見ながら笑っちゃった。

「私も、楽しかった!また明日学校で」

すぐに返信した。すぐに既読がついた。
蓮見てくれたんだ。
なんだかくすぐったい。
蓮の家は、すぐそばにあるのに・・もう蓮に会いたい・・
ベットで寝転がりながら、蓮のメールを何度も見ていた。
そのまま、いつの間にか眠りについていた。

目覚ましの音が部屋中に鳴り響く。
もう朝か・・カーテンを開けると朝の光が眩しく入り込む。
今日も、良い日でありますように・・

「愛菜、おはよう!昨日の報告をしてもらおうか」

満面の笑みで、私を見てくる結奈。

「昨日、結奈だけ残して帰っちゃってごめんね」
「全然、気にしないで!結局、舞は蓮がいないから合流しなかったし
 おかげで男子達とカラオケバトルで盛り上がったから、楽しかったよ」
「良かった。昨日ね蓮と小さい頃に遊んだ公園に行ったんだ。特に話をしたわけじゃないけど
 帰りに携帯番号交換したんだ」
「急に距離が縮まったじゃん!たださ、蓮って女子にも優しいじゃん?なのに舞には
 何で、あんなにそっけないんだろうね」
「確かに・・いつもの蓮だったら嫌でも笑顔で答えてるよね」

下駄箱で上履きに履き替えてると

「おはよう」

見上げると蓮がいた

「あっ、おはよう」
「何だよ、ぎこちないじゃん!」
「そんなことないよ」
「嘘だよ」

蓮が笑った。
やっと蓮と話せるようになったんだ。
それだけでも、心が満たされている。

「加賀谷君、おはよう」

思わず私まで蓮と一緒に振り返ってしまった。
舞だ・・

「ああ、おはよう」

また蓮はそっけない態度で、教室に足早に歩いて行った。

「待ってよ、加賀谷君」

舞は慌てて靴を履き替えて、蓮の後を追った。

「愛菜、あれはかなり蓮に惚れ込んでるな」
「そうだね、いつも圧倒されちゃう・・」

教室に入ると、蓮の席の前で夏目舞が蓮を占領していた。

「ねえ、今日の放課後どっか行かない?」
「用事あるから、無理」
「いつなら空いてる?」
「あのさ・・」

蓮が言いかけたところで、チャイムが鳴った。

「加賀谷君、また後でね」

舞は、そそくさと自分の席についた。
蓮を見ると、また面倒臭そうに窓の外を見ている。
蓮は舞のこと、どう思ってるんだろう・・

休み時間に結奈と教室で離していると、蓮達がきて

「今日の放課後こそ、皆んなでどこか行かね?」
「蓮は、今日用事があるんじゃないの?」

思わず、蓮に聞いてしまった

「えっ、用事?ああ、あれね断りたかっただけだから特に用事なんて無いよ」
「じゃ、決まり!」

結奈が手を叩いた。

「どこ行く?」
「駅前にできた、ハンバーガーショップでも行こうぜ」
「いいね、放課後お腹空くんだよね」

話に盛り上がってると、教室の入り口で舞達がこちらも見ているのに気付いた。
今までの会話聞かれてたかな・・
その後も、特に舞が蓮のそばに来ることもなかった。

ホームルームも終わり、みんなで下駄箱に向かうと舞達が待っていた。

「加賀谷君、今日用事があるんじゃなかったの?」
「あるよ。こいつらと遊ぶから」
「じゃ、私達も一緒に行ってもいい?」
「悪いけど、無理」

舞は私達のところを睨みつけた。

「愛菜、完全にライバルだと思われたね」
「どうしよう」
「そうしようじゃないでしょ!愛菜は蓮だけ考えてればいいの!」
「だけど・・」

蓮は立ち尽くす、舞に気にすることなく歩き出した。
私達も、慌てて蓮達の後を追った。

「絶対あんたには渡さない・・」

通り過ぎる瞬間、聞こえた言葉・・
えっ・・今私に言ったの・・
舞の言葉に気になりながら、ハンバーガーショップへ向かった。
ハンバーガーショップは駅前に新しくできたばかりで話題になっていた。
お店の外観はオシャレな作りで、扉を開けると学生達で賑わっていた。
席についた時、蓮とがいつも一緒にいる健が

「蓮、夏目舞って蓮のこと好きなの?」
「知らねーよ」
「いつも蓮のところ追っかけてくるよな」
「興味ないね」
「蓮、好きなやついるの?」

思わず、飲んでたジュースを吹き出しそうになる。
蓮を見ると蓮と目があった。

「別に・・」
「えっ、いないの?」
「俺の話は、もういいよ」

蓮、本当は好きな人がいるんだ・・
何となく蓮の態度で分かる・・
距離を縮めるどころか、距離が離れて行くだけの気がする・・
いつの間にか、外が暗くなってた。

「そろそろ帰るか」

お店を出ると、外は真っ暗で街灯がついてた。
サラリーマンの人達が足早に家路に急いで歩いていた。

「俺はこっちだから」
「私も、同じ方向だ。愛菜は蓮と同じ方向だよね?蓮、愛菜のこと送ってあげてね」
「ああ」

結奈がジェスチャーで合図を送った。
・・結奈・・ありがとう・・だけど今日はそんな気分じゃないよ・・

「愛菜、行こうぜ」
「あっ、うん」

みんなと別れて、蓮と歩き出した。

「危ない!」

気が付くと、私の横スレスレを自転車が走り抜いていった。
蓮の腕の中で守られていた。
蓮の顔が近い・・
いつの間にか、見上げるほど蓮の方が身長が高いな・・

「おい!気をつけろよ」
「・・ごめん、ありがとう」

ずっと、蓮の腕の中にいたかったけど蓮の腕が離れていく・・
いつの間にか、蓮の制服の袖を掴んでた。

「・・愛菜?」
「あっ、ごめん」

慌てて袖を掴んでいた手を離した。
何か、気不味くなって蓮の顔も見れなかった。
蓮も、何も言わず私の横を一緒に歩いていた。

「愛菜、好きな奴いるの?」
「えっ・・」
「いや、何でもない」
「い、いるよ」

蓮が一瞬切なそうな顔をした気がした。

「そっか、上手くいくといいな」
「えっ、ちょっと待って・・」

気が付くと、もう家の前で蓮を繋ぎ止める言い訳も思いつかなくて・・

「また、明日な」

蓮が足早に、自分の家の方へ歩いていってしまった。
・・待ってよ・・好きな人は・・蓮なのに・・
いつの間にか涙が溢れ出てきて、止まらなくなった。
家の玄関の扉がこんなにも重かったかな・・それくらい何するにも力が入らない。
部屋に入った瞬間、ベットにうつ伏せに倒れ込んだ。
溢れ出る涙が止まらない・・

目覚ましのアラームが鳴り響いた。
あれから全然寝れなかった。
鏡を見ると、泣き腫らした顔が写ってる。
どうしよう・・こんな顔で学校なんていけない・・
休もうか、悩んでるとメールがなった。
こんな朝に誰だろう・・結奈かな・・
携帯を持つても力が入らない・・
携帯を見ると、蓮からだった。

「愛菜、今日放課後に話がある」

えっ、何だろう・・
でも何でよりにもよって、こんな酷い顔の日なの・・
ギリギリまで、目を冷やしたけどダメだ・・まだ腫れてる・・
結奈と待ち合わせ場所に着くまでの間、人とは目を合わせないようにしたを向いて歩いてた。

ドン!

誰かにぶつかった。

「ごめんなさい!」

見上げると蓮だった。

「愛菜、どうしたその目?泣いたのか?」
「何でもない!」

蓮を避けて走ろうとした時、急に腕を掴まれた。

「待てよ」

ダメだ、今蓮の顔を見たらまた涙が溢れてきそうになる・・

「愛菜?」

結奈だ。
私は慌てて、蓮に掴まれた腕を振り払って結奈のそばに駆け寄った。
今、蓮は何を思ってるんだろう・・
心配してくれたのに、こんなに冷たい態度を取って・・
私・・最低だ・・

「愛菜、その泣き腫らした顔はどうしたの?」
「結奈・・」

我慢してた涙が一気に溢れ出る・・

「どうしたの?泣かないで」

結奈が私を目立たないように、通学路から外れた道の方へ連れていってくれた。
昨日の帰りのこと、結奈に話した。

「それで、ずっと泣いてたの?何ですぐに連絡してくれないの!」
「ごめん・・」
「蓮は、愛菜が他に好きな人がいるって誤解してるんだ」
「うん。でも蓮は私が誰を好きになろうと興味ないんだよ」
「でも今日、話があるってメールきたんでしょ」
「うん・・でも、さっき蓮お顔見たらまた泣きそうになって酷いことしちゃった・・」
「蓮は、わかってくれるよ。私がフォローしておこうか?」
「ありがとう。でも大丈夫」

結奈と話したら少し落ち着いて、いつの間にか涙も止まってた。
遅刻ギリギリで教室に入ると、蓮はすでに席に座っていた。
私の顔を見ることもなく、ずっと窓の外を見ていた。
蓮に完全に嫌われたかな・・
その後の授業も、全然頭に入ってこなかった。

お昼休みに教室にいたくなくて、結奈にお願いして中庭で過ごした。
中にはには花壇があり、ベンチがいくつかあり天気の良い日は場所を取るのが大変なくらい人気の場所だ。
結奈が気を使って、チャイムと同時に走って場所を取ってくれた。
お弁当を広げてはみてみたものの食欲があるわけではなく・・
お弁当のおかずを箸で摘んではお弁当に戻しての繰り返しだった。

「愛菜、ちゃんと蓮と話してみたら」
「・・無理・・どんな顔して蓮と話せば良いかなんて分からない・・」
「でも、ちゃんと話さないと想いは届かないよ」
「うん・・分かってる・・」

結奈もそれ以上は何も言わなかった。
携帯を見ると、そろそろお昼休みが終わる時間だった。
空を見上げると、雲一つない青空・・
ダメだ・・私の心はこの空と正反対の曇り空だ・・







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