都合のいいふたり
涼介が帰って来た。
急いで帰ってきたのか、冬なのに額にうっすら汗をかいている。

「そんなに急がなくてもよかったのに。」

「あゆ、最近元気ないし、体調悪いって言ってたから、心配もしてたし。」

出て行く最後まで、涼介は優しいんだ。

「ありがとう。もうすっかり元気だったよ。今日は誰にも邪魔されずにゆっくり眠れたし。」

「邪魔ってなんだよ。俺のこと邪魔だと思ってたの!」
「冗談だよ。で、話って何?こんなに急いで帰って来たんだから、よっぽど大事な話でしょ。」

私の心臓は、バクバクと音を上げる。

「そうだな。でも、あゆの元気そうな顔を見れて、ちょっと安心した。水だけ飲ませて。」

私は、涼介には元気そうに見えるんだ。
だったら、私は大丈夫。

涼介は、ペットボトルの水をゴクゴクと音を立てて飲んでいる。

「涼介の大事な話って、ここを出て行くってこと?」

涼介は口に含んでいた水を、キッチンのシンクに吐き出した。

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