藍先輩の危険な溺愛レッスン。
だけど、心がもう動き出しているのは自覚してる。


好きなのかもしれないって曖昧な気持ちから、絶対に好きって確信へ。


また彼が放ったボールがゴールポストに吸い込まれていく。


「藍先輩」


彼を見つめながら小さく漏れた声。


聞こえるわけなんてないのに。


だけど、振り返った彼はこっちへ向かって笑顔で手を振った。


うそ、気がついたの?
私のあんな小さな声が聞こえた?


「キャーせんぱぁい」


周りにいる女子達の悲鳴が体育館中にこだまする。


「どうしよう、やばいカッコいい。私の方を見てた」


「違うったら私だよ」


みんな思い思いに言ってはしゃいでいる。


あ、そか。私1人に対して手を振ったわけじゃないんだ。


胸の奥がチクンと針で刺されたみたいに痛くなる。


あんな風に彼は誰にでも気軽に魅力的な笑顔を向けることが出来る人。


きっと彼にとっては何でもないことなんだろうな。
< 164 / 332 >

この作品をシェア

pagetop