藍先輩の危険な溺愛レッスン。
だけど、先輩にしつこく言われたので彼の白いTシャツをそっと掴んだ。


「このくらいで……いいです」


自分からこんなことするのが恥ずかしいから、俯きながらそう言うのが精一杯。


「またそういうこと……」


彼はハアってため息を吐き、苦笑いする。


「愛菜ちゃんにはかなわないな」


「は?なんのことですか?」


「いいやなんでもないよ。どう?少しは男嫌いじゃなくなってきた?」


「私はどちらかというと嫌いって言うより、怖いって感覚で」


「怖いか……。まあ愛菜ちゃんはこれまで痴漢とかストーカーとかたくさん嫌な思いしてきたみたいだし仕方ないか」


「うん」


「でも大丈夫だよ。これからは俺がいるから何でも相談に乗るからね」


先輩が慈しむように私を見つめて、そんな優しいことを言うから一瞬、胸の奥がホワッと暖かくなる。
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