運命が変えた一夜 ~年上シェフの甘い溺愛~
「・・・おいしい・・・」

心にまで染み込むようなスープ。

冷え切っていた体も心も、一気に温かくなるスープ。

「おいしいです・・・」

一口食べた瞬間から綾乃の止まっていた涙が再びあふれ出した。

「よかった」
微笑みながら綾乃を見つめる悟。

「ごめんなさい、こんないい歳の女が泣くなんて、恥ずかしいですよね。」
慌てて自分の手で涙を拭おうとする綾乃の手を、悟はとっさに握りしめた。
「けがしてる。」
まだ傷を手当てしていない手。
「見ないでください。恥ずかしいから。」
手の自由を奪われて自分の涙をごまかせない綾乃がうつむく。
< 32 / 349 >

この作品をシェア

pagetop