春の雨に濡れて
第16話 受験勉強の息抜きの夏休み
7月21日(木)から8月31日(水)までは学校は夏休み。会社の今年の夏休みは8月8日の週で土日を加えると9日間になる。混雑を避けて6日(土)から10日(水)までの5日間帰省することにした。

夏休みは受験勉強の天王山だけど、美香ちゃんにどうすると聞くと、気分転換したいから、連れてってという。

それで、折角なので、行きは軽井沢で1泊してから、金沢に入り、実家で3泊して帰ってくることにした。美香ちゃんは勉強道具を持参するという。

【8月6日(土)】
8月6日(土)に美香ちゃんの作ったお弁当を持って出発。軽井沢で下車。駅に荷物を預けて自転車を借りてサイクリングして見物。やはり夏の軽井沢は涼しい。

美香ちゃんも上機嫌。お昼は植物園でお弁当を食べた。3時に上田に移動。話題の真田城を見物、夕食は信州そばのうまい店へ行った。

宿泊は駅前のビジネスホテル。軽井沢のホテルは予約が直近だったため満室でようやく上田にホテルを見つけて予約した。

上田は会社の工場があって、入社時に2か月ほど研修でいたところで、このあたりの軽井沢や小諸にも土地勘がある。軽井沢は毎週休みに同期の仲間と見物に訪れていた。ただ、10年前とは随分変わっていた。

美香ちゃんは夏休みに入ると同時に、受験の準備をはじめていた。学校が休みだから家事をしても勉強時間は十分あった。

今日は気分転換になってよかったと喜んでいた。部屋はセミダブルでかなり狭いが、枕が二つ並んでいる。

美香ちゃんは狭いベッドがまんざらでもなさそう。そういえば、ベッドでははじめてだ。今日くらいは勉強を忘れてもいいでしょうと、しがみ付いてくる。

受験勉強が始まってから、遠慮してほどほどにしていたが、今日は良いかと張り切ってしまった。その後、爆睡。

【8月7日(日)】
次の日、上田から新幹線で金沢へ。11時には実家についた。もう結構な暑さだ。昼ごはんはまた近くのうどん屋さんへ。夏は冷やしうどんがうまい。

暑いので部屋を軽く掃除して、冷房を入れて、美香ちゃんは2階の寝室で4時までお勉強。僕は隣の自分の部屋で片付け。

祖父が電器関係の仕事をしていたので、家の部屋にはすべてクーラーがある。ただ、今の冷暖兼用タイプではなく、クーラーのみの古いタイプ。省エネと冬のために機会を見て、買い替えようと思っている。

4時になって日差しも少し和らいだので、二人で3泊4日分の食料の買い出しに、歩いて12~3分のスーパーへ。ここは野菜、果物、魚、肉類が中心。すごく安いと美香ちゃんが驚くくらいで、特に野菜と果物は東京の1/3位の値段。

このあたりは少子高齢化でお客はお年寄りばかり、あと20年もすると住む人がいなくなるかもしれない。限界集落に近づいている。都市一極集中の弊害だ。

夕食は夏向きの和食。確かに重いものは食べたくない。夕食の後片付けを済ますと美香ちゃんはまたお勉強。今晩はゆっくり寝ようねとパスの合図。美香ちゃんも「はい」と了解。昨晩は張り切り過ぎた。休養もしないと。

【8月8日(月)】
今日は朝の涼しいうちにお墓参り。結婚の報告もしなければならないので、もちろん美香ちゃんも一緒に。タクシーを呼んで、大乗寺山の墓地へ向かう。タクシーを待たせて、墓地の入口にある店で花と蝋燭と線香を買ってから、再び坂を上って行く。

中腹にお墓がある。祖父が見晴らしがよいと言って、ここに自分でお墓を建てた。タクシーを待たせて二人でお参り。金沢は新盆で7月にお墓参りをするので、7月のお墓参りの名残はもうすでに片付けられている。

祖父が選んだだけあって、見晴らしがよい。この辺りは古戦場であったという話を聞いたことがある。心地よい風が吹いている。これで結婚の報告が終わって、ほっとして帰宅した。1時間でお墓参りが済んで暑くなる前に帰れた。

それから、昼まで美香ちゃんはお勉強、僕は庭の草とり。5月の連休に草取りをしたが、もう雑草いや野草が一杯生えている。

今は、ドクダミが満開だ。祖母がドクダミは身体によいと、花が咲いた今頃、摘み取って干していた。お茶混ぜて飲むと癖がなくなるので夏から秋にかけて飲んでいたのを思い出した。

昼食はソーメン。大学生のころ、休日の昼食がソーメンだと、これじゃ力がでないと祖母に言っていたものだが、今はこれくらいの軽さの昼食が丁度良い。確かに、もう育ち盛りでもない。暑い時はソーメンが一番と二人で食べた。

午後も美香ちゃんはお勉強。僕は草取りに疲れてのんびり昼寝。気持ちいい。夏休みを満喫。

夕食は、ソーメンじゃ力が出ないでしょうと、肉野菜炒めとソーメンの残りのだし汁で作った澄まし汁。簡単で済みませんというので、勉強しながらありがとうとお礼。今日もゆっくり寝ようねとパスの合図。勉強しますと少し寂しげ。

11時ごろ、2階の寝室兼勉強部屋へ行くと、勉強終わったと抱きついてくる。一瞬その気になったが、明日は海水浴へ行く約束。朝早くからお弁当を作るので、思い留まって、そっと抱いたまま就寝。

【8月9日(火)】
朝、暑くなる前にお弁当を持って出発。金沢駅まではバスで15分、それから浅野川線北鉄金沢駅から電車で終点内灘駅までは20分足らずで到着。駅から徒歩20分くらいで内灘海岸へ、家から約1時間で海水浴場に到着。東京と比べると海がとても近い。

美香ちゃんがどうしても日本海で泳いでみたいというのでやってきた。学校へ戻ったら日本海で焼いて来たと自慢したいとか。家からこんなに早く着けるとは思わなかったと驚いていた。

浜茶屋(海の家)で着替えを済ませて、波打ち際へ向かう。幸い波は穏やかだ。ただ、10時ごろだというのに、もう日差しが強く気温もかなり高くなっている。足の裏が焼けるように砂が熱い。最初はゆっくり歩いていたが、耐えられず駆け足で波打ち際へ。

美香ちゃんはスクール水着、帽子をかぶらないので、手ぬぐいを頭に巻いてやる。かっこ悪いといったが、無理やり巻いた。僕は実家においてあった学生時代の海水パンツ。

海に入り身体を海水に浸す。水温は高くない。少し泳いで、波打ち際で砂遊び。美香ちゃんがきれいに焼くためにオイルを塗ってくれと言うので、丁寧に塗ってやる。余り焼き過ぎると後が大変だよといっても、焼きたいから一緒に焼こうと、オイルを塗ってくれる。

海を見ていると落ち着くねと美香ちゃん、もう顔が真っ赤になっている。東京よりも空気がきれいなためか日差しが強く感じられる。確かに気持ちがいい。

海水浴なんて何年ぶりだろう。美香ちゃんも海水浴は両親と小学生の時に行ったきりだという。どうりで張り切るはずだが、このあたりがまだ子供だ。

お昼になったので、浜茶屋へ戻ってお弁当を食べた。お茶も持参したもの。色白の美香ちゃんは日に焼けてもう真っ赤。大丈夫と聞いても「大丈夫、せっかく来たのだから焼かなくちゃ」と午後もさらに焼くつもり。

もうすでに焼き過ぎだから、少しだけだよといって、砂浜を走って波打ち際へ、少し日に当たってから、海に浸かって身体を冷やそうと、無理やり海水に浸からせる。海水に浸かると少しピリピリするというので、もう上がった方がよいと浜茶屋へ戻って着替え。

まだ1時過ぎだけど、これ以上いると疲れるから帰ろうと、二人駅へ向かう。駅前で、電車を待つ間にかき氷を食べた。冷たくておいしい。

帰りの電車では美香ちゃんが僕の肩にもたれてひと眠り。疲れたと見える。金沢駅で駅弁を二人分買って、タクシーで帰る。日焼けはかなり疲れるのでタクシーでも寝ている。

3時前には家に着いた。美香ちゃんはもうぐったり。クーラーを効かせた寝室で休ませる。今日はもう勉強どころではないだろう。

6時ごろ、寝室から降りてきた。身体がほてる、日焼けし過ぎたといっても後の祭り。赤い顔と赤い肌が痛々しい。

「だから言っただろう、焼き過ぎると大変だよって」

「これほどとは思わなかった。日焼けを甘く見ていた」

「とりあえず、お弁当を食べよう」

「食べ終ったら、冷たいシャワーを浴びたい」

「こういう時は温いシャワーにした方がいい。冷たいシャワーだと返って火照るよ」

「分かった」

「今日はお勉強をお休みにするから抱いて下さい」

「いいよ、喜んで」

シャワーを浴びて寝室で待っていると、バスタオルを身体に巻いた美香ちゃんが入ってきて、そのまま抱きついてくる。

「だめ、日焼けしたところがひりひりして集中できない」

「水着を着けていたところは大丈夫だろう」

「肩と背中がお布団に触れるとひりひりして、腿も触られると、ひりひりしてだめ」

「残念だけど今夜は諦めるとするか。濡れタオルで冷やしてあげる」

冷蔵庫からアイスノンを取り出して、水を入れた桶に沈めて、手ぬぐいを冷やす。冷えた手ぬぐいで、美香ちゃんの肩、腿、額を冷やしてやる。

「冷たくて気持ちいい。ありがとう」

「僕も腿がひりひりする」

「楽しみにしていたのに今夜は諦めます。そっと抱いて寝て」

やれやれ、お休み。

【8月10日(水)】
一晩寝て時間が経ったのと冷やしたので、ひりひりは幾分収まったみたい。7時に起きて、美香ちゃんは朝食と昼のお弁当を作った。今日はもう帰省する最終日で午後には東京へ向かう。

朝食後、9時から12時まで美香ちゃんはお勉強、僕は家の片付け。お昼のお弁当を家で食べて、1時にタクシーで駅へ。外はかなりの暑さ。2時前の「はくたか」で東京へ。

家には6時前に無事帰着。夕食は金沢で買ってきたお弁当。日焼けも落ち着いたので、お勉強の後、久しぶりに愛し合う。やっぱり家が一番落ち着いてできる。
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