罰恋リフレイン

「俺はずっと薫のことを考えてた。後悔と、自分に対する怒りと、薫に会いたいって。そればっかり思ってた」

「そうなんだ……」

気恥ずかしくてうまい言葉を返せない。

「薫のことが好きだから。俺の気持ちを疑わないで」

疑わないで、か。
私がまだ罰ゲームの延長だと思っていると蒼くんは気づいている。
気持ちは嬉しい。これが本当に本心だとしたら。

蒼くんはじっと私を見つめる。何かを言いたそうな顔をして。

帰らないのかな? まだ何かあるの?

「蒼くん?」

「あの……さ……キスしていい?」

「え……」

「だめかな? まだ早い?」

不安そうに私を見つめるからだめだなんて言えなくなる。
思わず周りを確認する。家の角にも電信柱の影にも誰も見当たらない。

「薫、今ここには俺たちしかいないから」

「でも……私とキスなんて気持ち悪いでしょ。罰ゲームだとしか思えないし……」

「マジかよ……まだ疑う?」

蒼くんの顔が歪んだのが街灯の明かりに照らされて確認できる。

「そうだよな……疑うよな……」

何と答えていいか分からずに私も下を向く。

蒼くんは私とキスするの嫌じゃないの?

「はあぁ……」と溜め息をついた蒼くんは私を見据える。

「薫とキスしたい」

甘えるような声で言われるともう拒否なんてできない。

少しずつ心を寄せたふりをしないと蒼くんへの復讐が遠くなる。
キスなんてどうってことはない。ただ唇をくっつけるだけなんだから。今は蒼くんを満足させることが大事。

そう自分に言い聞かせて蒼くんに向けて小さく頷き目を閉じた。

蒼くんの腕が私の腰に回る。体を密着してくると私の唇に柔らかいものが触れた。

< 61 / 105 >

この作品をシェア

pagetop