エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
 




「百合ちゃーん、どう? 勉強、はかどってる?」


 近衛先生に婚約者がいたという話を聞いてから、今日でちょうど一ヶ月。

 あの日の夜、私は近衛先生に一通のメッセージを送った。

 内容は、【しばらく勉強に集中したいので、連絡を控えさせてください】というものだ。

 婚約者のことについては、最後の最後まで悩んだ末に、結局、触れることができなかった。


「なんだかんだ、試験まで二ヶ月切ってるしね。学生の頃に比べたら頭も固くなってるし、ほんと、覚えるのが大変で」

「百合ちゃんが無理なら、俺なんて絶対無理だなぁ。でも、みんな百合ちゃんのこと応援してるから。頑張ってな!」


 常連の内田さんに励まされ、私は曖昧な笑顔を浮かべた。

 ……応援してるから、か。

 一ヶ月前、私が送ったメッセージに対する近衛先生の返事も、【わかった、応援してるから】だったっけ。

 それ以来、近衛先生とは一切の連絡をとっていない。

 私は私で空き時間のすべてを勉強に費やしてきたし、それが今の自分がするべきことだという自覚もあった。

 もしかしたら近衛先生の方では、梨沙子さんとの結婚の話が着々と進んでいるのかもしれない……なんて。

 気を抜くと、つい後ろ向きなことも考えてしまう。

 でも、そうなったらきっと、私たちはこのまま自然消滅になるんだろうという、不思議な諦めもあった。

 
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