エリート外科医の灼熱求婚~独占本能で愛しい彼女を新妻に射止めたい~
 

「わかったよ。それで、出前ってどこに何を持っていけばいいの?」

「さっき、百合が店の外の看板を片付けてる間に、中央総合病院の外科医局から注文の電話があったのよ」

「中央総合病院って、うちのお得意さんだよね」

「ああ、そうだ。うちの特製チャーハンの注文が入ったんだよ。わかったら、さっさと行ってこい! くれぐれも失礼のないようにしろよ!」


 フンッと鼻を鳴らした父を見て、母は苦笑いをこぼしていた。

 お母さんてば、よくこの頑固なお父さんとこれまでやってこれたよね。

 私だったら、絶対無理。


「ごめんね、百合。あんたも疲れてるのに。達哉(たつや)がいれば、達哉にお願いするんだけど……」

 〝達哉〟とは野原食堂の跡取りで、私の六つ年上の兄のことだ。

 普段、出前の配達はタツ兄ちゃんがやっているのだけど、今は新婚旅行でハワイに行っている。

 私に働き口が見つかるまで、野原食堂で働けばいいと言ってくれたのもタツ兄ちゃんだった。

 昔から察しの良い兄は、私が会社で〝何かあって〟実家に帰ってきたことに気がついているようだった。

 おかげで私は、会社を辞めてもとりあえず路頭に迷わずに済んだ。

 だから、タツ兄ちゃんが留守の間は、私がタツ兄ちゃんのぶんも働こうと決めていた。

 
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