クールな副社長はウブな彼女を独占欲全開で奪いたい
 エレベーターに乗って部屋のある三階のボタンを押す。指先がぶるぶると震えているのに気づき、両手をきつく握り合わせた。

 姉はもう帰宅しているだろうか。食事についてアレコレ聞かれるだろう。平静でいられる自信がない。

 三階に到着して通路に降り立つ。すぐに部屋に入って、玄関扉を背にして立ち尽くした。

 遥人さんって誰にでもああなのかな。気軽に女性に触れるのは、相手が勘違いするから止めた方がいいと思う。

「小春?」

 リビングから姉の声がする。その場から動けずにいる私のもとまで姉が歩いてきた。

「どうしたの?」

「私、本気で好きになっちゃった」

「……前に、宝生さんといるのが楽しいって言ってたもんね。でも彼は結婚しているんでしょ」

 姉の声には、非難の色が滲んでいる。

「分かってる。だからもう会わない」

 そう宣言して、口をきつく結んだ。

 姉はなんとも言えない表情をたたえている。
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