褒め上手な先輩の「可愛い」が止まりません
「おはよう須川!」

「おはよう。ねぇ、西尾先輩の話してるの?」



須川くんが瞳をキラキラさせて私達のいる一番後ろの席までやってきた。

名前を耳にしただけで飛んで来るとは……さすが西尾先輩のファン。



「うん! 今ね、実玖から先輩とデートした話を聞いてたの!」



可南子の陽気な発言に、再びシャーペンの芯がボキッと音を立てて折れた。

バッと顔を上げると。



「デート……?」



目を真ん丸にして固まっている須川くん。

そんな彼の口から放たれた一言は、今にも消え入りそうなトーンだった。

こ、これはマズい……!



「ち、違うの! 文化祭のショーの相談で会っただけで……!」



呆然と立ち尽くす彼に必死に弁解する。

ごめんね……!
先輩のファンなのに、内緒で出かけちゃって本当にごめんね……!



「コーディネートを一緒に考えただけで、付き合ってるわけじゃないからっ!」

「そう……? 良かった」



笑顔が戻り、ホッと一安心。

ふぅ、誤解されずに済んだ。
必死に弁解してたら汗かいてきちゃった。

意味深な表情を浮かべている可南子に気づかず──私は熱くなった体を下敷きで扇いで冷ましたのだった。
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