王太子殿下と王宮女官リリィの恋愛事情


「おはよー…あれ、リリィ。どうしたの?」
「う、うん…ちょっとね」

わたしが朝から姿見の前に座る事なんてなかったから、マルラはかなり驚いたみたいだ。今までは身だしなみチェック程度にしか使ってなかったから。

(今までじっくり見たことなかったけど、改めて見るとひどいな……)

肌は日に焼けてそばかすだらけだし、お手入れもろくにしてないから荒れ放題。忙しかったから、髪の毛も伸びっぱなしであちこち跳ねてる。髪のコシが強いから、クセがつくと悲惨なのに。

(……何の努力も覚悟もなく……か)

昨夜のエリスさんの言葉は、本当にその通りだ。わたしは具体的な努力を何もせず、ただべそべそ泣き言を言っていただけ。
終いには王太子殿下を否定するような事まで言ってしまって……。

どれだけ、エリスさんを深く傷つけてしまったんだろう。
ううん…彼女だけじゃない。
殿下に拒まれた他の女官たちも。きっと想像もできないたくさんの努力をしてきた。
なのに、わたしは傷ついた彼女たちを否定する様なことを。

何もしなかった、何もしてこなかったわたしこそ、殿下に一番相応しくない。だから、エリスさんが怒るのは当然の話。

(……わたしも、わたしができる努力をしよう。最初から勝手に諦めどうせ駄目だと泣くよりも、頑張って頑張って…その上で駄目と泣いた方がいい…)

今までは欲しくても手にはいらなかったものが多すぎて、諦めるのに慣れてしまっていた。期待した分の失望はすごいから、最初から期待せず諦めた方が簡単だったから。

でも、とわたしはキッと前を。鏡に写った自分を見つめる。

(でも、今度は諦めない……簡単に諦めたくない!わたしは…殿下のおそばにいたい。どんな形でも。だから…逃げない。自分のできる努力をしよう!)

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