白いジャージ3 ~先生とバージンロード~


「直は、今幸せ?」


お母さんは、さり気なくそう聞いて、空を見つめた。



「うん。幸せ」



こうしてお母さんとゆっくり話すのも久しぶりかも知れない。



4月からは、特に話す時間が減っていた。



「仕事、楽しい?」


「うん。みんな優しいし、仕事も少しずつ覚えてきた。でも・・・やっぱりまだペースがつかめないのかな。今日、電車で考えてたんだぁ・・・やっぱり無理してたんだなって」




新しい生活が始まるってウキウキする。


でも、その分疲れることも多い。



出会いがあるってことは、それだけ気を使うことも多く、本当の自分じゃない自分で過ごす時間も多い。



大好きな同期や先輩だけど、やっぱり慣れ親しんだゆかりや依子、専門学校の友達のように何でも話せる相手ではない。


飲みに誘われると断れない性格。


だから、先輩にも気に入ってもらえるけど、帰りが夜中になると翌朝は疲れが抜けない。


少し体調が悪くても、休むこともできない。


先生とのデートの約束があっても、会社の行事が入れば、そっちを優先しないといけない。




無我夢中で疲れていることに気付いていなかった。



体も心も・・・疲れてたんだな、私。



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