肉食系男子に、挟まれて【完結】


―――翌日。案の定あの後、あまり眠れなかった。


今日、ちゃんと久住君は登校して来た。
マスク着用で、何度も咳をしていたけれど熱はないらしい。

喉の痛みも治まったらしく、後は咳だけだって、たった今職員室で笑顔で話している。



「俺、バンド頑張りますから! 辻先生も見て下さいよ!」


隣にいる辻先生にも、話を振ってニコニコ笑顔を向けた。


垂れた目が更に小動物を思い出させるのだろう、辻先生は含んだ笑みで

「必ず行くわ」

と、言った。


久住君は無邪気に喜んでいるけど、私は心の声がわかるから曖昧に笑うしかない。


「それじゃ、失礼しましたー」


まだ鼻声の彼は手を振って、職員室を後にした。
私と辻先生は無言で目を合わせる。


「ワンコにパワー注入したんか」

「パワーってなんですか」


電話のことなんだと思うけど。話したいけど、今は無理。他の先生もいる。
辻先生の言葉に私は静かに頷いた。



「今日も忠犬は健在だったね」

「やっぱり犬なんですか」

「うん。安西ちゃんは羊とか言ってたけど、私にはどうも犬にしか。
それもトイプードル」

「ぶっ、ちょっと止めてください! そんな風にしか見えなくなります!」

「……だって、あのつぶらな瞳。一昔前のCMに出てた犬みたいじゃん。
あれ、確かトイプードルだったよね?」

「それはわかりますけども」


と、心の中でひっそりあのCMと久住君を重ねてみる。
似ている。彼そのものだ。
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