肉食系男子に、挟まれて【完結】


羊の様なふわふわした髪の毛。
垂れた瞳が、笑った事で更に垂れている。


ふにゃあって力の抜けた顔を見せる彼に、思わず私の顔も緩んだ。


「ほらほら、戻らないと休み時間なくなっちゃうよ」

「先生、次うちのクラスですよね?」

「そうだね」

「一緒に行きましょうよ」

「そうか、そうしようかー」


確かに次の授業は、久住君のクラスだもんな。
それじゃあ、一緒に行くか。


私は教科書やら、ノートやらを手に持つと立ち上がった。


職員室から出る時に、山本先生が視界に入る。
だけど、目を合わす事なく扉を開けた。


久住君と並んで廊下を歩くと、彼がニコニコしながら話しかけて来る。


「先生、コーヒーの香りがします」

「さっき飲んでたからね」

「俺、コーヒー飲めないから羨ましいです」

「大人になったら飲めるんじゃないかな」

「そうですかね?
……早く大人になりたいです」


それに私は目をぱちくりとさせた。
まさか、久住君からこんなセリフが出るなんて驚きだ。


今を思いっ切り謳歌している様に見えたし。


どう言葉を返そうか少しだけ悩んでいると、後ろからあの男の声がした。
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