堕天使、恋に落ちる
「一徹さん、由那さんお疲れ様でした!」
「あぁ」
帰り支度が終わり、部屋を出るとスタッフさんに声かけられた。
「お疲れ様でした!失礼します!」
「////」
「え?」
「―――由那!!行くよ!おいで?」
なんだか、顔が赤かったな?

一徹に引っ張られながら、ボーッとそんなことを考えていた。

帰りの車内で、私は一徹の肩に頭を預けてウトウトしていた。
「由那?眠い?」
「うん…今日は疲れちゃった…!今朝は退職してそのまま命さんに挨拶して、クラブで挨拶して、一徹に翻弄された」
「そうだな…目まぐるしかったな…!」
「でしょ?だから……ねむ、くて……」
そのまま意識をなくした。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
眠った由那の頭を撫でる、一徹。
その顔はとても穏やかだ。
いつもの一徹はこんな表情はしない。
命が恐れる程の男、一徹。
言い様のない黒い闇があるのだ。
“春日 一徹”と聞いたら、みんな口を揃えて“恐ろしい男”と言われる。
だからホスト業をしてる時も、この黒い闇が一徹の美しさを引き出している。

信号で止まった車内、運転手の視線を感じる一徹。
「なんだ?」
「い、いえ。そのような表情最近よく見るなと思って……」
「あぁ、そうだろうな…」

また静かに動き出す。
これから起こる悲惨な出来事の、嵐の前の静けさのように。
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