青い星を君に捧げる【壱】
「…はっ?今なんて」

「だから中学最後なのに悪いけど、お父さんが転勤になったから杏里も転校してほしいの」

「……わかった。準備しとく」


部屋に戻ってベッドに横になる。正直頭の中がぐちゃぐちゃ。もう二ヶ月以上も明日歌に会えてない。

海で交換した時にお互いのスマホにつけたドライフラワーのキーホルダーを見つめる。まだこれをつけてくれてるんだろうか。


「もう、全部なくなっちまえ」


俺はまだ明日歌のことが好きだけど、あいつはもう俺のことなんかどうでもいいのか。

そんなことを脳では考えていても、心は追いつけなくて静かに涙が流れる。スマホのカメラロールに残った明日歌の写真を最初から一枚ずつ目に焼き付ける。


大好きなんだ。彼女がもう一度答えてくれるなら転校なんてしないし、この腕で抱きしめたい。


その時一件の通知が入り、表示されていたのは明日歌からのメールだった。すぐにタップして開く。


『杏里くんへ

今までお返事出来なくてごめんなさい


私杏里くんの彼女やめたいと思います


いきなりでごめんなさい

今までありがとう

ずっと元気でいてね』


このメールは俺の気持ちを一気にへし折った。もう楽しかったあの頃には戻れない。


メールを閉じると再びカメラロールの画面になり、そこには笑顔の俺と明日歌のツーショット。


さよなら、俺の唯一の人。


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引越し前日、明日歌からメールが来た。開くつもりなんかなかったけど結局俺は開いてしまった。


『自分勝手でごめんなさい

明日お話したいです

○○の前で14時に待ってます』


明日は引越しの日。それにもう俺は明日歌に会うつもりは無い。彼女が俺を裏切った。顔も見たくない。

今はこの想いは消せない。でも時が経てばいつか色褪せて、枯れるだろう。


結局俺は14時に行かなかった。
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