Dying music〜音楽を染め上げろ〜
ーーーーー…
「は?」
「…。」
招集所で俺を見かけた怜斗。5秒ほど固まってから聞いてきた。
「え、なんで夏樹が選抜出てんの?救護って言ってたじゃん!」
ことの経緯を話すと、
「ついてんね、お前。」
「できることならあまり出たくはなかったよ。」
「何走者?」
「3走者。」
少し間をおくと顔を顰めてこう言った。
「マジかよ。」
…レイトの顔で分かった。
最悪だ。うん、次言う言葉はわかるぞ。
「同じじゃん‼︎‼︎」
ほらな!
うっわ、ガチ?よりによって怜斗?
はああ、何なんだよ、4 分の 1 でマッチするかよ。
怜斗の横を全力疾走するということに嫌になって大きなため息をついた。
「おい、態度に出てんぞ。最悪って顔してる。」
「だって…」
でも、なんだろ、逆にお互い知ってるからかな。なんか、負けたくない。
入場がかかり、選手が入場する。
位置について一、よーい、
…バンッッ!!
ピストルが鳴って始まった。
お、メンバーの男子、三位じゃん。速いなー。あ、越されそう。
ぎりぎり三位のまま次の走者にバトンが渡った。一位が黄色軍、二位に赤軍、三位に緑軍、続いて、青軍、黒軍、桃軍。
一 あ、越された。
緑軍、青軍の二人に抜かれ、五位まで下がったまま、バトンが向かってくる。
マジ?この状況か。
第三走者は怜斗以外全員女子。てことは、未来ちゃんや涼香ちゃんほどの子がいなければワンチャン越せる。あとは怜斗をどうするか。
どんどん第二走者が迫ってくる。
一足先に怜斗が飛び出した。
一ーここ。
未来ちゃんに教えてもらったタイミングで地面を蹴った。
っよし!
バトンパスは成功。全速力で走る。
気づいたら、青軍を追い越していた、三位。
怜斗の背中がすぐそこにある。
「おい、あいつら並んだぞ!」
「軽音対決(笑)」
(マジかよ、夏樹横にいるじゃん。)
速え。もう少しで越せそうなのに。
怜斗を越せない。あと、30センチくらいなのに。
あ一無理。未来ちゃん頼む。
「お願いっ!」
「おっけ!」
未来ちゃんはビューンとまるで新幹線のように飛び出した。
そのあとすぐに緑軍の男子を追い抜いた。
速っや。
あ、一位に近づいている。そのまま二年生にバトンパス。
結果は一。
「おーいお疲れ〜!」
涼が手を振って向かってきた。
「接戦だったね!夏樹もめっちゃ速かったよ!」
「全然、」
「でも二位じゃん!」
「それは未来ちゃんが挽回してくれたから。」
「夏樹ちゃんのおかげだって!一人抜いてくれたからさ!」
そのあと涼香ちゃんと合流してリレーメンバーでも写真を撮った。
そのあとは閉会式。リレーは赤軍は二位だった。全体順位としては3位。まずまずだった。
少しずつだけど、生活に慣れてきた気がする。こういう学校行事一つ、たわいもない会話一つにいちいち感動している自分がいる。
1年前では考えられない感情。
大っ嫌いでトラウマの塊だった学校という存在が、ちょっと楽しい場所に変わりつつある。
「夏樹~、行くよー」
「うん、今行く。」
灰色だった生活に、色が付き始めている。
新しい出来事が次から次へと起きていく。
明日は、何があるだろうか。…ーーーー
ーーーーーーーーーー……
「まだ起きているの?疲れているんだから早く寝なさいよ。」
「はーい。」
寝たいのはやまやまだけど、このまま寝たら今日の出来事が頭から飛んで行ってしまう。覚えているうちに文字に書き起こしていかないと。