泣きたい訳じゃない。
莉奈からメールが届く。

「今、自宅に戻ったよ。」

時計を見ると、夜中の1時を過ぎたところだった。
俺は莉奈との電話を切ってから、夕食も食べていなかった。

「じゃあ、パソコン繋ぐから。」

そう返信すると、パソコンの前に座った。

パソコンに映し出された莉奈はお酒を飲んだのか、少し顔が紅らんでいる。

「遅くなってごめんなさい。待っててくれてありがとう。」

そう言う莉奈はいつも以上に可愛かった。

「ちょっと考え事してたから、俺もこんな時間になってるって、今、気付いたよ。」

「仕事のこと?休みの日まで大変だね。」

「まぁ、そんなとこかな。」

本当の事は言えない。

「お兄ちゃんのこと、ごめんなさい。」

「もういいよ。確かに、最初から高田さんが莉奈のお兄さんだって知ってたら、俺も変に緊張してたかもしれないからな。で、高田さんは俺のこと、気付いてた?」

「ううん、多分気付いてない。」

俺は莉奈のその言葉に心底ホッとした。

「そっか、じゃあ、当分は俺達のことは高田さんには内緒にしておいた方がいい?」

そんな妹思いの高田さんが全部を知ったら、この仕事に多少なりとも影響が出るのは免れない。
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