泣きたい訳じゃない。
早速、ロスへの出発のための準備を始めた。

誰にも相談もせずに決めてしまった。
でも、それを私らしいとも思う。

拓海はこの決断を応援してくれるだろうか。
兄は何かしら言ってくるかもしれないけど、ここは無視を決め込もう。

そもそも旅行会社で働いていると、こんな事があっても不思議ではない。

私の気持ちは、誰に何を言われても揺るがない。

仕事を進めていると、拓海からメールが届いた。

『ロスに行くんだって?大丈夫なのか?』

完全なプライベート口調のメールだった。
課長が拓海に連絡したんだろう。

『はい、そうなりました。
バンクーバーのサポートは少しの間できない時もあるかもせれませんが、ロスにいてもお手伝いできる事があったら言って下さい。
時差はなくなるので連絡は取り易くなるなると思いますので。』

なるべく仕事上のメールとして返信を試みた。

『では、出発前の最後の仕事として、現在の日本での留学のトレンドを資料としてまとめておいて下さい。
水曜日の高田さんとの打ち合わせ時に使いたいので。
頑張って下さい。』

拓海の本当の気持ちは分からない。
でも、最後の一言は、拓海からのエールだと受け取った。
バンクーバーでの拓海と兄との初対面がどうなるのかは心配だけど、私にはどうすることもできない。

拓海と彩華さんとの事を吹っ切っれた訳でもないけど、突然のロスへの出張という仕事のおかげで、今は仕事に集中できるし、前に向ける気がしている。
< 43 / 70 >

この作品をシェア

pagetop