ふたつの愛し方
Episode:4~英介~
北河総合病院の一人息子として育った俺には、大学の時から将来を約束された女がいる。

幼い頃から、医者になる定めを確約されたのと同じようなことだ。

だが………

朱希の素直に口には出さなくても、態度や表情から伝わる俺への想いに……気付いてしまっていた。


純粋に医療と向き合い、看護師の立場で俺と俊也に追い付こうと、一緒に医療を通じて一人でも多くの命を救いたいと、強くないくせに強がる姿に、いつしか俺自信も惹かれていたから。

そんな朱希をほっとけなくて、朱希が単身で飛んだボストンの同じ病院に行った。

そこには、最新の技術に着いて行こうと必死にもがきながらも、一生懸命に取り組む朱希の姿があって、確実にオペ看としての実力を身に付けていた。


病院から一歩出れば、知らない土地で踏ん張っていた事が崩れたように、俺に甘えてくる朱希を受け入れずには居らなくて、酒の甘い媚薬に負けて俺は朱希を抱いた。


その身体も、吐息も、唇も。

今まで抱いた女とは格段に違って、朱希以外は抱けないと思ってしまう程の快感だった。


わかってたんだよ。

いつか、朱希への気持ちも温もりも身体も手放さなければいけないこと。

最低な男だという自覚もあるけれど………

せめて約束された女が、ニューヨークの病院から医者として戻って来るまでだ、と覚悟を決めていたはずなのに………


英介……大好きだよ。

寝言で、何度も朱希に言われて……

はじめて口にされた朱希の想いに、もう手放さねぇよ。

俺も朱希を………ひとりの女として大好きだから。

どうするかな………まいったな……

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