ふたつの愛し方
Episode:6
足を引きずりながら、救命の仕事をこなしている所へ。


術後の様子を見に英介がやって来て、大丈夫か?

うん、大丈夫。

笑顔で答えた私の頭を優しく撫でる。

いつも痛みも不安も消してくれるのは、英介の温かい手。

朝方に捻った足首に触れて、撫でてくれた時も痛みが嘘のように消えて。

今は、今日も来るかもしれないという不安を消してくれた。


術後の患者さんの診察する英介の隣に立つ。


「問題なく順調です。このまま問題なければ明日には一般病棟に移れるでしょう」


麻酔から目を覚ました患者さんと傍らにいた家族に、そう告げて頭を下げる。

失礼します、と。

ありがとうございました、と言った家族に。


背を向けた英介は、別の患者さんの診察に向かう。

その背中を追いかけようとする私にも、家族は、ありがとうございました、と。

だから笑顔で頭を下げる。


英介と俊也を影ながらサポートして、患者さんや家族の、ありがとうございました、は私の糧になる。


大学病院と違って、専門医がいるわけじゃない。

運ばれてきた患者さん、外来に来た患者さんの様々な病気を、治療しなければならない。

ここに勤務している医者は全て、たくさんの知識と技術と対応力を求められる。

その中心に、英介と俊也が居て。

大学病院の医者からも、海外の医者からも認められる二人。

私の誇り。


技術と知性に優れた英介。

器量と人を引っ張っていける力量に優れた俊也。


ずっと、この二人の側で看護師として働いていたい。


この想いは誰にも譲れない。

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