ふたつの愛し方
Episode:8
《英介》


朱希の誕生日。

毎年、俊也も俺もプレゼントを渡している。

朱希も俊也と俺にプレゼントを渡してくれていて、ボストンに居る時もわざわざ送ってくれた。


今年は………と考えた時に浮かんだのはアクセサリーだった。

ネックレスは首輪、ブレスレットは手錠。

指輪は将来を約束した証。

指輪だけは今は送れない。


ネックレスもブレスレットも看護師の朱希には邪魔になるもので、毎日は付けられない。


今まで、女にアクセサリーなんて送ったことのない俺が調べて悩んで。


昔は奴隷という意味だったらしいが、おまじないに関しては、誰かの所有物という意味があるらしい、一粒のダイヤの付いたアンクレットを朱希へ。




「朱希、誕生日おめでとう」


俺は日勤、朱希は夜勤で当日には渡せずに、翌日に渡した。

ありがとう、と満面の笑顔をくれて。


「着けて」


跪いて、左足を太腿に乗せて、細い足首に着けてから、足の甲にキスをして舐めると、擽ったいのか身体を跳ねらせた。


「可愛い……」


呟いた俺を見下げて、顔を紅く染める。


今度は、アンクレットを着けた足首にキスをする。


大好きだよ。

誰のものにもなるな、と想いを込めて。

所詮は、俺の身勝手な独占欲。



整理がつくまでどれだけの時間がかかるかわからない。

それまでは、辛い想いをさせる。

俺の前では、大人になって泣いたことのない朱希。

俊也の前では、辛い涙も悔し涙も流していることを知っている。

その涙は、俺が幸せの涙に変えてやる。


時は、刻一刻と近付いている。


「英介さん、半年後に日本に戻るわね。北河総合病院の医者として、貴方の許嫁として」


「……ああ……待ってるよ……」


許嫁の橋本 華世に、今はそう言っておこう。


朱希を守るため。


中学のガキの時の約束を二人で切磋琢磨しながら、俊也とだったから医者になれた。

ボストンに俺が行っていた時も、俊也が北河総合病院を守ってくれた。

医者として、片腕を任せられるのは俊也だけで、俺が持ち合わせていない器量と人を纏める力量を兼ね備えている。

そんな盟友の俊也と医者として共に歩むため。


朱希と俊也が居れば何もいらない。

総合病院の院長の座も、院長なんて上部だけの肩書きも。

それだけ、二人は俺にとって。

かけがえのない、誰にも譲れない大切な存在。
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