ふたつの愛し方
Episode:10
病院内に、一気に広まった許嫁。

橋本先生は、容姿端麗でスタイル抜群。

白衣の下には高級そうなワンピースを着て、5㎝はあるだろうピンヒールを履いている。

密かに、病院内でピンヒールなんて有り得ない!

ドラマのあの女医さんの受け売り?

などと、批判を浴びている。


当然、私も色々と訊かれるけれど面倒で、やんわりと躱している。


夜勤の日ーーー。


8階の仮眠室のソファーで夜食を食べていると、英介が入ってきて。


お疲れ、と隣に座ったかと思うと、肩を抱いて覗き込むように唇を塞がれた。

リップ音を立てて離れた唇に、私からもキスをすると、バカ、と。


「もっと……したくなるだろ」


「……もう少しだけ」


甘えるように唇を寄せると、ソファーに身体が沈んで。

柔らかいキスを、何度も何度もしている。

気が付けば、額をくっつけて、一緒に笑っていた。


「やっぱり、止まらないね」


「だから言っただろ?」


「だって……もっとしたかったんだもん」


「はいはい……食ったら一緒に寝るか?」


小さく頷くと、身体を抱き締めながら起こしてくれた英介にも、サンドイッチを半分あげてー……ー…


久しぶりに仮眠室のベッドで、いつものように密着して眠る。

大きく息を吸い込めば、手術着に染み込んだ消毒液の匂いがする。

同じ匂いに包まれて、背中に回した手で背中を撫でて、大好きだよ。

俺も大好き、と髪にキスをしてくれて。


1時間は寝れるだろ、おやすみ。

うん、おやすみ。


私が部屋に行くのは…ご飯を冷蔵庫に入れに行く時だけになっても。

英介は私の部屋に来なくなっても。

身体を繋げられなくなっても、こういう少しの戯れの時間だけで満たされるんだよ。
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