ふたつの愛し方
Episode:13
《俊也》


英介から朱希を迎えに行ったと報告を受けて、一週間後ーー。


「近藤……まだ俺は朱希が好きだ。それでも本当にいいのなら、俺と付き合ってくれるか?」


休みがたまたま重なった前日の夜、真っ暗な海にドライブに来て、近藤にそう告げた。


都会から少し離れただけで、油を塗ったような星空が輝いている。

その星空を見上げたまま、いいよ、と。


「高橋くんを好きにさせてあげるって言ったでしょ?女に二言はない!」


近藤らしい応えに笑ってしまうと、何で笑うのよ、と横から抱き付いてきた近藤を抱き締め直す。

ありがとう、と。



「……美和って呼んで?もう彼女なんだから」


「いいよ……美和」


顔を綻ばせた美和は、俺の首に腕を回すと、背伸びをして唇を寄せてくる。

その瞬間、可愛いと思った俺は寄せられた唇にキスをしていた。

何度も角度を変えて、触れるだけの長いキスをして、離した時にはずっと求めていたような柔らかさの唇に……もっと触れたくなっていた。


そして…ー…俊也、と美和に見つめられて言われたとき、心を鷲掴みにされた衝撃に自分でも驚くくらいの甘い声で。

今夜は帰したくない、と言っていた。


朱希を好きなのに、何を考えているんだと思いながら、心地好い柔らかさを求めて、また唇を重ねていた。

今度は舌と舌が絡み合い、静かな海に唾液の絡まり合う音が響いて、美和からは甘い声が漏れる。


「……帰りたくない」


唇を離した直後、潤んだ瞳で見上げられて、俺の理性の糸は断ち切られる寸前だった。


「美和……俺の部屋に帰るか?」


小さく頷いた美和の頭を撫でると、嬉しそうに微笑む。



帰る途中、美和の必要なものを買って。

今は別々にシャワーを浴びて、乾かしてと甘えてきた美和の髪を乾かしている。


「俊也……乾かし終わったら……いい?」


「いい?って……バスタオル巻いただけの状態で言うなよ?」


「ダメ?俊也だって、上半身は裸でしょ?触れたくなったちゃった」


「……お前な……折角、俺が保ってた理性を断ち切るな」


乾かし終わってから、ドライヤーを直しながら言うと、後ろから抱き付いてきた美和の手が胸に触れる。


「何年ぶり?」


「2年ぶりくらいだな」


「どこの女を抱いたの?」


「どこの女ってな……居たんだよ、彼女が。好きにはなれなくて振られたけどな」


そう、好きにはなれなくて振られた。

私は誰かの身代わりじゃないって。

俊也くんは私以外の誰かを見てるって。

今は、辞めてしまった看護師だった。


だからこそ。


美和は、本当にいいのか?
俺の気持ちはまだ、完全に美和にはないんだぞ?

いいの。
ずっと好きな人に抱かれたかったんだから。


それを訊いたら……理性の糸はブチっと音を立てて、完全に切れてしまって……

美和の身体を抱き抱えていた。
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