燕雀安んぞ天馬の志を知らんや。~天才外科医の純愛~


―――『思い出してしまった』……?


「先生があのメッセージを?」
「メッセージ?」

「スマホのメモ帳で『思い出すな』って」
「あぁ……。そのほうが信頼させやすいって思ったから」
「じゃあなんで最後まで隠してくれなかったの」


「今つばめの様子見てたら、もう無理かなって。ここにきて、つばめ、なにか思い出し始めてるみたいだし。だからさ、もういいよ。作戦変更。ちゃんと思いだして。僕にひどいことをされたこと。僕に無理矢理されたこと全部思い出して」


 先生は私の両腕を掴む。
 背中に冷たい背が流れたのが自分でもわかった。


「……先生、離して?」
「ちゃんと思い出して。僕にされたことを。そしてまた記憶をなくすほど恨んでいい。だから僕から離れないで」


 記憶がなくなったのは先生を強く恨んでいたから?

 じゃあ、なんであんな写真あったの。
 写真に写っていた二人はとても楽しそうだった。

 でも、断片的な記憶からも、今の先生の様子からも、先生の言っていることが嘘だとは思えなくて、私はただ押し黙って、まっすぐに先生を見つめていた。

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