インダスの黒曜男
 その昔白磁、男が一人いた。年端は二十歳、美男金髪紫の目であった。称号があり、何と、なんと陀羅。

 懐かしい景色をインドで見た陀羅は心枯らして帰って来た。スクーターが走る。俺は裸足で走った。泣いた。もう死にたかった。みな格好イイ。俺なんか俺なんか、もう只の僧、陀羅。
 思えば、カルカッタで見た景色みたいに俺は後背に仏と思いたかった。泣いて、もう死んで良いのと悟った。
 菩提樹、この白い花の前で死にたかったと泣いた。その男、名を、インダスの黒曜男。緑色の髪をしていて、瞳は金色で綺麗だった。
 神だったその男は、一夜で愛し合い消えた。目下見える事は無くなり、それは懐かしい事なのだと悟った。
 クニタチに帰ったら、そう話した陀羅は、帰って早々見込まれ、満点陀羅と賜った。逢瀬たインダスの黒曜男は、本場者の神だった。いずれも思い出せば悟り美では無く、美しい国エデンを慮った。
 女郎花を片手に、右利きであった。何だかうまそうだな。喰っちゃダメっ。そう自答した陀羅は、満点陀羅、曼荼羅の祖も名乗ったとされ、千年前にいた男であった。
 美しいその白磁の体は、愛し尽くされ、価値は減ったとされた。だが、男が多く少年愛は多々語りべされたと風の神が噂をして更に彼を愛した。
 スクーターをまたひとつ買って、出掛けた。女郎花を飾って少しばかりの旅。もう、インドには行けなかった。
 インダスの黒曜男。菩提樹。大して、俺はクニタチでは無いと言うのに。
 言わせると神満点陀羅は、クニタチ神とされて仕舞っていた。一人だけいる、クニタチ神では無いクニタチの神。
 はあ?ややこし。コクヨー!泣いて更に旅。お堂に祀られた南無阿弥陀仏。
 俺はその対っ。そうっ、きっとそうよねー!インダスのほとりの、菩提樹。俺は彼に恋をした。
 もう、手放せそうも無いこの美貌権現は、今日も只一人の、男。インドは広かった。髪をとかして金髪で、学は高く大卒、そりゃあサイコーだよ梵天。思えば、そんな事ばかりの旅があった。
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