春永すぎて何が悪い?
雑貨の件
グリズリーのドアを開ける。

「いらっしゃいませー。」

慣れた感じでりっちゃんが近付いてきた。
俺はいつものカウンターに座る。

ダンさんが目の前から水をくれる。
俺はメニューを見ることもなく、いつものチキンカレーを注文した。

ダンさんは45歳の笑いジワが刻まれた渋いおじさんだ。
ゲームの中に出てくる街の警察おじさんにソックリ。

「ダンさん、なんでこの店、ドアも重いし暗めなのに女の人入ってくるんですか。」

ダンさんがシワを作って笑う。

「俺がいい男だから。」
「どこですか、いい男。」
「ほら、ここにいるじゃないの。」

そんな適当なことを言ってキッチンの奥に消える。

店のレイアウト、どうしよっかな。

りっちゃんが近づいてきた。

バチッと目が合う。
髪を見てる。

「すごい切りましたね!」

やっぱり。

「彼女が爽やかにしろって言うからこうなった。」

俺は短くなった前髪をつまむ。
視界がスカスカして苦手だ。

「服以外の雑貨とか置いてみたらどうですか?お店。」

突然のアドバイス。

「雑貨?なに、例えば。」
「んー、食品とか、食器とか、家具とか?」

りっちゃんが口をプクッとさせて言う。

この子、何歳くらいなんだろ。
20歳になったのかな。

食品とか、かー。

「そういうのあったら入りやすい?」
「コーヒー豆とかお茶とかが入り口付近にあったら女の人も入りやすくないですか?」

ああ、なるほど。

「りっちゃんなら入れる?」
「私なら気になったら入ります。」

りっちゃんが笑って言う。
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