ごきげんよう、愛しき共犯者さま

 はらり、ひらり。
 手から紙が落ちて、(くう)を舞う。

「っ、あ、あ、あああっ!!」

 かくりと膝が折れた。
 パイプ椅子が派手な音を立てて転がったけれど、関係ない。
 床に突っ伏して、馬鹿みたいに声を荒げ、叫ぶ。

「っどうかされましたか!?」

 騒音に気付いたのだろう。ドアが開くような音がして、聞き覚えのない声が聞こえた。そのすぐあとで、「あ、あなた……?」と私の様子を伺うような妻の声が聞こえたけれど、腹の奥底からせりあがってくる声は己にも止めることはできなかった。

 ── 妊娠、していたようです
 ── 俺と千景は兄妹です
 ── 千景がなぜ、死ぬことを選んだのか

 伎と千景は、血の繋がった兄妹だと思いつつも気持ちを伝え合い、精神的にも肉体的にも愛し合っていたのだろう。そして、千景は伎の子を身籠(みごも)った。
 けれど、自分たちは血の繋がった兄妹。千景は、お腹の子と共にこの世を去ることにしたのだろう。産めない、と。そして子共のことを伎には話していない。だから伎は、漠然と自身のせいだと思いながらも、明確な理由は分からないまま、千景のあとを追ったのだろう。

「っう、あ、ああ、」

 まさか、と思った。
 けれど、真っ先に浮かんだ仮定は何よりも真実味を持っていた。

「っだ、大丈夫ですか!?」
「あ、あなた!?」

 ひゅっ、と喉が絞られる感覚に陥った。

「大変だ、過呼吸をおこしてる」

 家族に、なろうとした。
 家族に、なりたかった。
 家族に、家族に。

「っ誰か! ちょっと! 来て!」

 そんな、私のエゴが息子達を殺した。
 私の描いた、求めた、幸せの、せいで、彼らは、死んだ。

「あなた! あなた、しっかりして!」

 ああ、神さま。
 これが、二十年間の幸せ(ハッピーエンド)の代償だと、あなたは、おっしゃるのか。


 ーAfter story 終ー
< 38 / 38 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:31

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

新人ちゃんとリーダーさん

総文字数/35,849

恋愛(ラブコメ)51ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
  「……嫌、か……?」  ねぇ待って。 「あ、う……い、やじゃない、です」  ずるいよ、そんなの。 本編 start&end 2020 09 26 番外編 → ① 2021 02 14 追加 → ② 2021 02 21 追加 → ③ 2021 07 29 追加  
エル・ディアブロの献身

総文字数/31,663

恋愛(その他)55ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
  「お前ら付き合ってどれくらい?」 「あー……半年くらい」 放課後の教室、半開きの扉 それを開けようとして聞こえたふたつの声 「てか、本当、いい金づる捕まえたよな。お前」 そのうちのひとつは あまり話したことはないクラスメイトの声。 「はは、まぁな」 そしてもうひとつは 付き合って半年になる恋人の声、だった。 ○最終章:裏にて若干のグロ描写あり● ○ワンクッションはおいておりません● 上記が苦手な方は、どうか、ご自衛を。 start&end 2021 07 14  
タイトル未定の恋心

総文字数/2,615

その他7ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
  あのコに夢中で必死なキミは きっと、ずっと、 気付かないままなんだろうね start&end 2021 07 02 夜桜冬希様 素敵なレビューありがとうございます。  

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop