捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
見えない真実 Side 祥吾
呆然としつつ俺は、とりあえず落ち着こうとビールに手を伸ばすも空なことに気づき、そのままテーブルへと戻した。ぐしゃりと自分の髪を乱しながら、さっきの紗耶香の泣きそうな表情を思い出して胸が痛む。どこかで間違えたのか?
そんな思いが沸き上がるも何が何だかわからない。

俺は少し前を思い出していた。

久し振りに仕事で紗耶香を見た日、俺は唖然とした。昔の面影は多少あるものの、幼さはなくなり、誰が見ても振り返るだろうその姿。凛として美しく洗練された完璧な女性。
打ち合わせを終え、SOWA食品のビルの中で知り合いを見つけて紗耶香の話を少し聞けば、遊んでいるだの、大村専務の愛人だのたくさんの話が聞けた。
やっぱり。

俺の中に浮かんだのはその言葉しかなかった。
< 111 / 251 >

この作品をシェア

pagetop