捨てられママのはずが、御曹司の溺愛包囲で娶られました
守るべきもの
そんな昔を思い出していた私は、ゆっくりと身体を起こすとデスクで電話をする専務が目に入った。その様子からたぶん奥様なのだろう。幸せそうな表情に少しだけ羨ましくなる。

起き上がった私が目に入ったのか、「あとで」そういうと専務はスマホをデスクに置くとこちらへと向かってくる。

「調子は?」

「申し訳ありませんでした。もう大丈夫です」
そんな私の言葉に専務は少し考えるような表情を浮かべた後、「そうか」とだけ言葉にした。
いつのまにか定時を過ぎており、私は慌てて残りの仕事をしようと自分のデスクへ戻ろうとした。

「立花、今日はいい。早く帰れ。俺も帰る」
自分も帰らなければ私が終わらないと思ったのか、専務も珍しく帰る支度を始めた。
確かに今の精神状態で仕事をミスするわけにもいかない。大きく息を吐くと素直に専務に頭を下げる。

「ありがとうございます」
「ああ、ゆっくり休め。それに何か協力できることがあれば言えよ」
きっと東和社長と何かあったことはわかっているだろう。

「はい」
それだけを言うと、私は少しだけ笑顔向け部屋を後にした。
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