嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
「個人的にあきづきの着物は気に入っている。潰れてもらっては困る」
「本当に? 本当にいいんですか?」
「あぁ」

 なんでもないことのように礼はうなずいてみせた。

(あぁ! 神様、仏様、そして御堂様! 偏屈だなんて思ってごめんなさい。ほんの少し前に世間知らずのお坊ちゃんって言いかけたことも謝ります。ちっとも気難しくなんてないじゃない。むしろこんな人格者はなかなかいないわ)

「ありがとうございます!このご恩は一生かけてお返しします。もちろんお金も少しずつでも返していきますから」
「金を返す必要はない。ご恩とやらも一生をかけてもらうほどではない」
「な、なんていい人! 御堂さんは私と父の命の恩人です」

 涙を流して喜んでいる美琴の顎をくいと持ち上げると、礼はにやりと不敵に笑う。

「一生までは求めないが、君の数年間は俺がもらうことになるぞ」
「はい。それはもちろんなんなりと! 御堂様の言うことならなんでも聞きます」

 無利子無期限で五千万もの大金を貸してくれるというのだ。下働きでも奴隷でも、なんでもする覚悟だ。

「それはよかった。では、五千万の対価としてひとつ頼みがある」

 美琴は礼の言葉の続きを待った。どんな頼みでもイエスと答える覚悟はある。

「君に、俺の子供を産んで欲しい」
「へ……?」

(どんな頼みでもイエスと……イエスと……む、無理でしょ〜)


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