嫁入り前の懐妊契約~極上御曹司に子作りを命じられて~
(あきづきを守るためなら、子供を産むくらい……いやいや、全然くらいじゃないし。無理、無理、無理! でもここで断ったら、あきづきは……)

 いくら考えても堂々巡りだ。正解にたどり着ける気がしない。

「迷ってる。ってことは交渉の余地はあるんだな」

 ふっと頬をゆるめた礼は、やっぱりどこか楽しげだった。自分はこんなにも真剣に悩んでいるというのに。もしかしたら彼はただのジョークのつもりで、美琴をからかって遊んでいるだけなんじゃないだろうか。そんな疑念さえわいてくる。
 
「大体、子供ってなんなんですか?」

 突拍子もなさすぎて、理解が追いつかない。

「知っての通り、俺は御堂流の次期家元だ。跡継ぎを残すことも俺の責務のひとつだ」

 それはもちろん美琴にも理解できる。国内のみならず世界にも名を馳せる御堂を継ぐ者は絶対に必要だろう。礼は話を続けた。

「俺は来年で三十になる。そろそろ跡継ぎをという声がうるさくてな」
「普通に結婚されて、子供を作ったらいいじゃないですか」

 ど正論を美琴はぶつけた。だって、彼は御堂礼なのだ。数百年と続く名門の家に生まれ、五千万を「そんなもんか」と言えてしまう財力を持ち、おまけにこの容姿だ。結婚したいとひとこと言えば、何十人もの女性が列をなして押しかけてくることだろう。
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