消えない傷・消えない痛み
四話

**願い


「暖、どう?
起きてご飯食べれる?」
「おはよう、美桜。
少しだけなら食べれそう。」
「あっ、ごめん。
暖、おはよう。」
と、肩を竦めて笑う美桜の顔を
暖は、眩しげに見ながら
微笑んだ。

あの日、倒れた俺を見つけて
凛さんと救急車の手配を
してくれた美桜。

あれから半年が過ぎた時
再び倒れた俺は
美桜に大変な願いをした。

自分の病名を告げて
残りの人生を共に過ごして
欲しい······と。

美桜は、二、三日
考えてから返事をくれた。

ひと月、ふた月、
かかると思っていた。
もしかしたら、一緒にいることは
できないのでは····ないかと
諦めもしていた。

だが·····美桜は·····
「暖と一緒に生きて行きたい。
宜しくお願いします。」
と、頭を下げてくれた。

式とかは、挙げない。
指輪だけは贈った。
美桜は、凄く嬉しそうに
笑っていた。
あの時の顔を
俺は忘れることはないだろう。

母さんは、ひどく驚いていた
だが、涙を流して喜んでくれた。

美桜の職場である
沢田教授と
美桜の仲良しの凛さんには
お会いした。
二人は、とても心配そうな顔をしていた。
だが、美桜が
「自分が望んだ事です。
だから、大好きな二人に祝福して欲しい。」
と、お願いをした。

最後に二人は、
「「後悔しないように
     幸せになりなさい。」」
と、言ってくれた。

一番の難関は、
美桜の両親だった。

中々、承諾を貰えずに
一緒に暮らし始めた。
美桜のごり押しで。

俺は、美桜がいないときに
美桜の両親の元へ伺った。

「申し訳ありません。
お義父さんと呼ばせて
頂く事を了承してください。」
なんと、お呼びしてよいか
わからないので。」
そう伝えると
お義父さんは、苦笑いをしてくれた。

俺は、自分の病気の話し
高校から美桜を想っていたこと
を話した。

その上で
「これを預かって下さい。」
と、頭を下げながら
差し出したのは
美桜と書いた婚姻届だ。

俺は、母が
美桜は、凛さんが
証人欄に記入してくれている。

美桜の御両親は
ひどく驚いていたが
「私は、美桜と一緒にいれたら
それだけで幸せなんです。
美桜の戸籍を汚すなんて事は
できません。
美桜が私が死んだ後
綺麗なままで
笑顔溢れる家庭で
幸せに暮らして欲しい
そう思っています。
美桜には、色々と言い訳をして
色んな書類の名義は変えさせて
いません。
ただ、表札が違うだけです。
お義父さん、お義母さんの
ご心配や悲しみは、重々に理解している
つもりです。
ですが、バカな男が
自分の命と引き換えに
自分の大好きな人との時間を
過ごしたい
その願いを叶えて頂くわけには
いかないでしょうか?」
と、涙を流しながら
頭を下げる俺に

美桜の両親も涙を流しながら
「1日でも長く美桜のそばにいなさい。
それが、私との約束だ。
良いね、暖君。」
と、お義父さんに言われて
お義母さんは、俺の背中を
擦ってくれた。

暖は、自分が亡くなった後の
事を少しだけ美桜の御両親に
お願いをして
美桜と暮らすマンションへと
帰った。
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