寄り添う花のように私はあなたの側にいたい
「大丈夫よ。ちよさん。」

私が自分の部屋に戻ろうとした時だ。

「小花さん。」

お父様の声が聞こえてきた。

「はい。」

するとお父様は、何を思ったのか、私に手招きをした。


「小花さん。客室にお客様がいらしている。保が来るまで、お客様の相手をして貰えるかな。」

息が止まった。

私に、保さんの妻になるかもしれない人の、相手をさせるの?

「できないか?」

それは、私の度量が試されているって事?

「今や君は、保の愛情を受け入れて、正妻に近い立場だ。身なりもきちんとしている。役不足ではないと思うが。」

「分かりました。保さんが帰ってくるまでで、いいのですね。」

「ああ。」


私はお父様に頭を下げると、客室の前に行き、ドアを叩いた。

「はい。」

小鳥の泣き声みたいな返事だ。

きっと、箱入り娘というのは、こう言う人の事を言うのだろう。

「失礼します。」
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