花を愛でる。
花を愛でる。1

プロローグ




目が覚めた時、この白い天井が視界に入るのはこれで何度目だろう。

清潔感のある一室は空気が透き通っているように思えて息がしやすかった。
真っ白な天井を見詰めながら昨晩の記憶を呼び起こすと、気だるい身体をゆっくりと起こした。

ベッドのスプリングが鳴り、隣から籠った寝息が聞こえる。目を向ければ布を纏っていない男の背中が目に入った。
まだ睡眠が足りないと言わんばかりに掛布団を引き寄せる姿に朝から溜息が出ると、ベッドの周りに落ちていたキャミソールと下着を拾い上げた。

それから、


「(眼鏡……)」


ベッドサイドにある小さなテーブルに置かれていたスクエア型の眼鏡に手を伸ばし、慣れた手つきで耳に掛けると一瞬で視界はクリアになった。
まだベッドで眠る男を視界に入れぬよう寝室を出ると冷えた廊下を裸足で歩き、浴室へと向かう。

冷たい水を頭から被ると一気に意識が覚醒する。昨日触られたことをなかったことにするように身体の汚れと中途半端に残った顔の化粧を落としていく。
いつものように冷水でシャワーを浴びると募るのは昨晩の出来事に対しての後悔と嫌悪感。


「(今日は朝一で役員ミーティング、その後車を回して契約会社のトップとの会食。それから……)」


こんな時まで仕事のことを考えている自分に呆れた。


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