丸重城の人々~前編~
みんなが優しい笑顔で、柚希に微笑みかけている。
今初めて、柚希は思った。
【あー。私は甘えていいんだ。この人達に】と。

ほんとは一人で何もできないくせに、自分が強がっていただけだったんだと。

「助けて…」
「柚?」
「みんな助けて!!」
「フフ…了ー解!柚、ちょっと待っててね!後でいっぱいギュってするからな!」
と大翔。
「柚希、俺がすぐに終わらせるからね!また一緒に買い物しような!」
と中也。
「姫、今度またデートして?ちょっと運動してくるね!」
と玄。
「柚希ちゃん。大丈夫!またすぐに笑顔になれるよ?」
と将大。
「柚希は、私と部屋に行こうね!」
「え?でも…」
「大丈夫よ!殺すようなことはしないから。
ちょっと…いや、かなり痛い目みることにはなるだろうけど」
「大翔…」
「大丈夫…!柚と同じ苦しみ与えないとな……」
「行くよ、柚希」
「うん…」
柚希と響子が部屋を出たのを確認した、一行。


「さぁ、地獄を見せてやる……」
四人の雰囲気が、一気に黒く、闇の中に落ちた。
もう…柚希に笑いかけた、優しさや柔らかさが微塵もない。
「地獄って…。
それはこっちのセリフだよ!
チンピラが!!
俺がなんの準備もなく、ここに来たと本気で思ってんの?」
「だから?」
「やりたいなら、やれば?」
「は?」
「チンピラねめるなよ!」
この四人は色んな修羅場を体験している。
こんな脅しにビビる訳がない。
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