丸重城の人々~前編~
ある工場のような建物。
重そうな扉を開けると、たくさんの強面の男がいた。
ほとんどの人に、刺青が入っていて顔や腕に大きな傷がある。

「あっ翔さん!中也さん!
お疲れ様っす!」
どう見ても大翔や中也より年上に見えるのに、みんな一斉に立ち上がり、挨拶する。
それだけで、二人がどれ程の恐ろしさがあるのかわかる。
大翔は暴走族時代“翔”と呼ばれていた。

夏姫は恐ろしさで、震えていた。
「おっ!美人っすね!」
「ほんとだ!モデルかなんか?」
「ヤりてぇ…」
「お前キモいよ(笑)」
みんな口々に夏姫を見て話す。

「好きにしていいぜ!」
大翔の一言。
「え?いいんすか(笑)?」
「うん、なんか男に飢えてるみたいだから!」
中也が軽く夏姫の背中を押して、男達の方に向かわせた。
「え…どう、して?」
すがるような夏姫の目。
「お前、丸重城に男探しに来たんだろ?」
「え?」
「中也目当てだったんだろ?」
「どうして、それを…?まさか柚希に…!」
「あ?ちげーよ!柚がそんなこと言う訳ねぇだろ!?
お前見たらすぐわかった」
「俺が兄貴に言った。柚希に紹介された時、俺にすり寄って来たじゃん?
それにお前みたいな女、魂胆みえみえ!
だから最初忠告してやったじゃん?柚希のダチだから」

二人には、バレていた。
最初から………

「まぁせいぜい楽しめよ!」
「嫌ぁぁぁぁーー!!」

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