丸重城の人々～前編～

その後、柚希は朝食の片付けをする。
｢あの、お手伝いしましょうか？｣
｢え？あ…大丈夫です…ありがとうございます…｣
｢素敵な旦那さんですね？｣
｢はい…私にはもったいない人です…｣
なかなか目を合わせられない、柚希。

｢あ…話しかけない方がいいかな…？｣
｢いえ、目を合わせられないんですけど、お話なら。ごめんなさい…気を使わせて…｣
｢いえ、大丈夫ですよ。
ところで大翔さん、どこかで見たことあるんですよね｣
｢雑誌かな？大翔、カフェ経営してるから…｣
｢そうかも？素敵ですね…！｣
｢はい。早苗さんは、恋人さんは？｣
｢別れました。カメラマン志望だったんですが、なかなかいい仕事に出会えなくて…｣
｢そうなんですね…中也くんみたいな感じかな？｣
｢中也さん？｣
｢はい。私の義理の弟で、歌手志望なんです。とっても素敵なのに、なかなか……｣

｢ずっと尽くして来たのに…｣
｢え…？｣
｢突然別れを告げられて…｣

｢辛いですね…。
でもここではみんな家族みたいなので、早苗さんも楽にしていいですからね…？｣
｢はい。ありがとうございます｣