婚約破棄3回された公爵令嬢の代筆屋
「自分から婚約破棄を言い渡したんだ。いくら好きでもあきらめなければと思っていた。それが、もう一度チャンスが巡ってきた。婚約者を自分で探すと言う話だ。正体を隠して、一からまた初めて好きになってもらえればと……」
 アルの婚約者だった女性って……。
 自分で婚約者を探すって……。
「リリィーナ……、リリィーずっと好きだよ。もういちど、婚約してほしい」
 アルが膝をついてプロポーズの姿勢をとる。
 涙で前が見えない。
 アルの青空も、涙で見えない。
 私……。
 私なの?
 アルが好きな子というのは、私なの?
「だって、アル、好きな子がいるって……」
「本人を目の前にいきなり君が好きだとは言えないよ……」
 本当に、私?
「アル……私……ずっとアルには好きな子がいるから……諦めなくちゃって……」
 私の言葉に、アルがすっと立ち上がった。
「リリィーそれって、僕のこと好きだってうぬぼれてもいい?」
 アルが私の両手を取った。
 涙でぐちゃぐちゃの顔でうなずいた。


 後日談。

 晴れて、両想いになった喜びですっかり忘れていたけれど……。
「さぁ、ではしっかりとレッスンいたしましょうね」
 ロッテンさんの皇太子妃教育が始まった。

「リリィーも何年か先には王妃かぁ」
 レッスンのストレス解消に、力任せにインク棒をぼんぼんと紙にたたきつけてる私に、メイシーが現実を突きつける。
「無理だよぉ、絶対、無理っ!メイシー、今なら変わってあげるよ、まだ婚約段階だし。ほら4回も5回も変わらないからさ、婚約破棄とか平気だから!」
 
 識字率が上がったことにより優秀な人材が増え、発展目覚ましいアンドゥール王国。
 その立役者として名高い王女の指先のインク汚れを、いつも侍女が手袋を差し出して隠し通したことはあまり知られていない。
 




< 143 / 143 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:29

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
醜いと蔑まれた魔女がひそかに完成させた魔法薬。 「心の美しさが顔に現れる薬」がばらまかれた。 ちょうど、王立学園では卒業パーティーの真っ最中に。 卒業パーティーにシャーラは制服で出席する。他の卒業生が華やかなドレスに身を包んでいる。義妹も真新しいピンクの美しいドレス姿だ。シャーラは、着てくるためのドレスを持っていなかったのだ。 心の美しさに好きになったんだと、殿下が義妹にささやくが……。 *閲覧注意*あの名前を言ってはいけないおぞましい虫とか出てきます。Gから始まるあれとか!*
表紙を見る 表紙を閉じる
皇太子「お前は偽物聖女だ!婚約破棄する!」 ミラは、王宮を追放された。 でも、平気。 私には、戻る場所があるから。 神殿長が、待っているあの場所に……。
表紙を見る 表紙を閉じる
25歳で行き遅れ 実家の伯爵家を追い出されるように、 父親より3つ年上の辺境伯に 後妻として嫁がされました。 5歳の義息子と3歳の義娘の面倒を見て12年が過ぎ、 二人の子供も成人して義母としての役割も終わったときに、 亡き夫の形見として 「若返りの薬」 を渡されました。 15歳からの人生やり直し? 義娘と同級生として王立学園へ通うことに。 初めての学校、はじめての社交界、 はじめての……。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop