光を掴んだその先に。




少年が思った言葉を、まんま男は放つ。

それは残酷な現実なんかじゃない。
紛れもない真実なだけ。



『ぁぁぁ…っ、……ぁぁぁぁ…』



責めるべきは自分だ。
守れなかったのは自分だ。

惨めに土下座をして、惨めに願うことしかできなかったのは───自分なのだ。


そう、それはあのときだって。



“俺を殺せぇぇーーー…!!!”



父親が息子を守ったんじゃない。

あのときすでに男は正常な判断など持ち合わせていなかった。


たまたま息子である男を父親である男が殺さなかった、ただそれだけ。


道端に歩く蟻をたまたま踏まずに歩くような。

たまたまその場所、その時間に雨が降らなかったような。



『いつもお前に預けっぱな俺が言えた台詞じゃねえが。…ただ俺も、お前らを守れなかったんだ』



そこに含まれている者は3人だ。


絃織と絃だけじゃない。

元から病弱だったが、そんなものすら吹き飛ばすような明るい笑顔で笑っていた女。


彼女の祖父母は古くから天鬼組を恨む組織に殺された。

そして彼女の病気を悪化させたものも、またその柵─しがらみ─だった。




『いつかお前は俺を殺せ、───絃織』




あのとき血だらけの屋敷で。

父親がこの男の手で殺されてゆく様を、黙って見ることしかできなかった。


俺が守れなかったんだ、父親を。



少年は───うなずいた。



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