光を掴んだその先に。




「もうやめとけ。息あがってるだろ」


「はぁ…っ、は……っ」



そして敗北。

防具も蒸し暑いし道場はエアコンないし……エアコンとか言うなっての私っ!!

なーにが“安心安全家電はたっかやなぎ~♪”だっ!



「お疲れさまです2人共。これ、よかったらどうぞ。お口に合うといいんですが…」



彼女はタッパーに入ったレモンのはちみつ漬けを差し出した。


美味しそう、すっごい美味しそう…。

まだ食べてないけどわかる、これぜったい美味しいヤツ。



「私ダイエットしてるんで大丈夫です…!!」



あぁ、なに意地張ってるんだろう私…。

そのまま立ち上がって道場を出ようとしてるけど、そしたら那岐と桜子ちゃんを2人きりにしちゃうのに。



「絃、」



入り口寸前で足が止まる。


正直、並んでる2人を見るのが一番心にくるのだ。

一番つらいやつ…。
振り向きたくないけど那岐の顔は見たい。

だから若干振り返って返事をした。



「…なに」


「冷蔵庫にアイスあるから食っとけ。熱中症になっても知らねえぞ」



だったら一緒に食べようよ那岐。

私が小さいときから好きな理由って、那岐と一緒に食べたからだよ。


その頃の私も那岐となら全部が楽しかったはずだから。



「……ダイエットって言ってるじゃん」


「なら俺が食うからぜったい食べんなよ」


「嘘!いる!食べる!ありがとっ!……やっぱりあとでレモンも食べていいですか、」


「ふふ、どうぞ」



結局は意地を張れなかった。



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