光を掴んだその先に。
「退院おめでとうございますお頭!那岐さん!ご無事で何よりです!!」
ガヤガヤと群がる男たちを遠目に見つめて、私はその人の元へは行かなかった。
あれから龍牙組は終わって、いつも通りの日常が戻って。
陽太もこの場所に変わらずいてくれる。
事態は陽太の勘違いという話でぼやかして、納得していない者もいたけど、それ以上に何より驚かせたものがあったから。
「とうとう那岐さんが頭にまで上り詰めるなんて…!
これからもついて行きます那岐さんっ!!よっ!若頭っ!!」
「毎日毎日うるせえな。今日は資産会社との集まりがある、急げ俊吾」
「へいっ!!」
そう、お父さんが組長となって、那岐は頭となった。
そんな彼の命令ともなれば全員が頭を下げて聞くから。
本当は目の前でちゃんと“おめでとう”って言いたかったけど、彼は今まで以上に忙しくなってしまって屋敷を空けることが増えて。
それに私も修学旅行だったりでいなかったり、今も今でそれどころではなく…。
「あぁぁぁぁどうしようぅぅぅぅぅ!!無理だぁぁぁぁこんなの無理っ!!」
「ちょっと絃ちゃん黙って。ぜんぜん聞こえない」
「あ、ごめん。…じゃないよ!!いい加減自分の部屋で見てってばっ!」
相変わらず人の部屋でゴロゴロゴロゴロとこいつは…。
スナック菓子なんか持参してるし、まったく気が散るっての。
「てか、さっきからなに騒いでんの?もしかして生理?」
「なっ…!デリカシーないの!?プライベートとかあるよね!?てか違うしっ」
人には言うくせ土足で踏み込んでくる男、それが那岐 陽太。
改め天道 陽太。