光を掴んだその先に。
………あ。
ついうしろを追いかけて、彼の自室にまで上がり込んでしまっていた。
やっぱり私の部屋と同じくらいに広い。
若干造りは異なっているけど、相変わらず温泉旅館のような部屋だ。
「着替えさせてあげる!」
「…遠慮する」
「じゃあお背中流すよ!」
「……遠慮する」
疲れてるのかな……。
明日が誕生日なのに可哀想だ。
だから今日と明日はせめて気楽に過ごしてほしいのに。
どうにも空回ってしまっているような気がする。
「…ほらよ」
「わっ」
すると、脱いだジャケットが放られた。
ネクタイを緩めながら私を見つめる那岐は、その先にあるスーツ専用のハンガーラックを指差す。
そこに掛けてくれと、私にお願いしてる…?
「もっちろんっ!!」
快く受けたはいいものの…。
えーっと、この複雑な形のラックにはどう掛ければいいんだろう。
こうかな?こうかな?なんて試行錯誤していれば、ポスッと新たに背中へ追加された。
「それも頼む」
「…いつの間に着替えたの?」
スラックスを受け取った私の前には既に浴衣姿の男。
「お前が苦戦してるとき」と、簡潔に答えてくれる那岐は私を見つめてふっと微笑んだ。