10憶で始まった結婚は○○だった
 午後になり。

 ティケルとファリサは別々で昼食をとった。

 ティケルは執務室で、ファリサは部屋で食事をして。

 午後からも執務室にこもっているティンケル。

 ファリサは一人部屋で本を読んで過ごしていた。
 本棚にある難しそうな本を読んでいたファリサ。

 2時間ほど本を読んでいたファリサは、一息ついて立ち上がった。

 そのままクローゼットに歩み寄って行ったファリサ。


 
 クローゼットを空けたファリサは、荷物を持って来た鞄を開けた。

 鞄の中には着替え類が入ったままだ。
 その中に小分けしてある小さなバッグがある。
 
 そのバッグを取り出したファリサ。

 小さなバッグをそっとあけると、その中には小瓶が入っている。
 黒いキャップで透明の瓶。
 その中には白い粉が入っている。

「…お母さん…。今度は私が、全部奪ってあげるから…」

 そう呟いたファリサがニヤッと口元で笑った。

 そのまま小瓶をポケットにしまったファリサは、クローゼットを閉じて部屋を出て行った。



 廊下を歩いて来たファリサが、そのまま向かったのはサーチェラスの部屋。
 
 公務で外出しているサーチェラスの部屋は誰もいない。
 
 周りを気にして誰もいない事を確認してサーチェラスの部屋に入ってきたファリサ。

 綺麗に片付いているサーチェラスの部屋。
 机の上も綺麗に整えられていて、書類もきちんとファイルに閉まってある。

 
 テーブルの上に、いつもサーチェラスが飲んでいるお気に入りの紅茶が置いてある。
 粉砂糖の入った白い器には、サラサラの白い砂糖が入っている。

 それを見たファリサは、ポケットから小瓶を取り出した。

 器の蓋を開け、小瓶の中の白い粉を半分ほど砂糖に入れてスプーンで混ぜたファリサ。

「…これで確実。…後は、日にちを待つだけ。…」

 フン! と鼻で笑いを浮かべたファリサ。

「…お母さんを殺して、このお城は助かったんだから。…倍返ししてもらうから…」

 小瓶をポケットにしまって、ファリサはそのまま部屋を出て行った。



 パタン…。

 ドアが閉まる音が何だか悲しげに聞こえた。





 ファリサが出て行った後、スーッと寝室のドアが開いた。

 
 寝室から出てきたのはサーチェラス。

 じっと砂糖の入った器を見つめているサーチェラス。


「やはりあの子は…ミネルの産んだ子供だったのですね…」

 

 砂糖の入った器を手に取ったサーチェラスは、悲し気に微笑みを浮かべた。

「…私は、ミネルを殺したと思われているのですね。…そう思われても、仕方がないと思います。…ミネルが亡くなり、ミネルが残した多額の資産を受け継いだのは私ですから…」

 
 ポケットから携帯電話を取り出したサーチェラスは、そのまま電話をかけた。


「…もしもし、私です。お忙しい所を申し訳ございません。少し、お時間を頂けませんか? 大切なお話があるのです。…これだけは、お話ししなくてはなりませんので。…はい、私がお伺いしますので。… …では、その時間にお伺い致します。宜しくお願いいたしますね、ケイン先生」


 電話を切ったサーチェラスは、悲しげな目をしていた。
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