１０憶で始まった結婚は○○だった
「ファリサさん。お聞きしてもよろしいですか？　」
「…母の事でしたら…何も話したくありません…」

「お母様ですか？　」
「国王様が私に聞きたい事は、母の事ですよね？　」

　どうして分かったのだ？
　ちょっと驚いた目をしたサーチェラス。

「…私には父しかいません。…」
「もしかして、お母様は亡くなられたのですか？　」

　そう尋ねられると、ムッとした目を向けてきたファリサ。

「…あの人は母親じゃない…」

　サッとサーチェラスの手を振り払ったファリサは、ムッとした目のままサーチェラスを見た。

「国王様と仲良くする気はりません。…自分は…１０憶ギロで買われてきただけですから…」


　そう言い放ち、ファリサはその場から去って行った。


　待って下さい！　と言いたかったサーチェラスだったが、ファリサに触れていた手から痛みが強く伝わってきて動けなくなった。

「…あの女性は…ウィーヌに似ていた…。まさか…」


　ウィーヌ。
　貴族の娘で、サーチェラスの許嫁であった。
　音楽家一族であるウィーヌの家は、全員が有名音楽家として国中に名が通るものばかりだったが、ウィーヌだけはピアニストとして音楽祭に出ても賞を取る事は一度もなかった。
　家柄の名前だけで音楽祭にも出してもらえていただけであり、ウィーヌには何も実力がなかった。
　王家とつながりが深かった事から、ウィーヌを将来サーチェラスと結婚させようと親同士が決めていたようだ。
　
　だがサーチェラスはウィーヌではなく、ミネルと言う北グリーンピアトの平民で医師一族である資産家の娘との結婚を選んだ。

　プライドの高いウィーヌは、平民であるミネルにサーチェラスを奪われたと言って逆上していたようだったが…。

　サーチェラスが見えた女性がウィーヌだとすれば、ぺリシアと結婚していたのだろうか？
　ぺリシアは妻は亡くなったと言っていた。

　あの傲慢でプライドの高いウィーヌと、ぺリシアが結婚していたとは考えられない。




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