貢ぎモノ姫の宮廷生活 ~旅の途中、娼館に売られました~

「そうして一度、抵抗して見せるのも娼館仕込みが。
 ……なるほど、燃えるな」

 燃えないでくださいっ。
 鎮火してっ。

「おとなしくしろ。
 抵抗するな」
とジンに両の手首を押さえ込まれる。

「そういう男を誘うような素振りはもうよい。
 今、王位を継いだばかりで、朝も昼も夜も忙しいのだ。

 娼婦の駆け引きに付き合っている時間はない」

 駆け引きじゃなくて、本気ですっ、とアローナが上に乗ってくるジンを押し返そうとしたとき、
「王っ! ジン様っ」
と扉の外から声がした。

 あの騎士のもののようだった。

「大変ですっ。
 アッサンドラ国から前王の許にお輿入れされる予定だったアローナ姫が突如、行方不明に!」

 ジンが起き、扉を開ける。

 騎士は衣の乱れたアローナをチラと見たが、すぐに視線をそらし、ジンに報告した。

「まだ姫に付き添っていた一団が到着していないので、詳しいことはわからぬのですが。
 どうもアローナ姫は旅の途中、忽然(こつぜん)と姿を消してしまわれたようで――」

「神隠しか……?」
とジンが(いぶか)しげに呟く。
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